私の散歩道

この所の暖かさにやっと桜がほほ笑み始めました。でもここから見える花の名所はまだまだのようです。
私は出来る限り毎日二、三十分は歩くことに決めています。一人で好きな時間気ままに歩きます。朝でも昼でも夕方でも思いついたら出発です。

一番好きなコースは家を出てまず田圃道に沿った通学路を歩きます。
休耕田のあぜ道に、小さな星が舞い下りて来たようにおおいぬふく゜りの瑠璃色の花を見つけてついしゃがみこみます。ひそやかなたたずまいが胸をきゅんとさせるほど愛おしい。ふふふ、いい思い出もあることだし。

あたりにはつくしの坊やや、こい紅紫の仏の座も揺れています。
春風も心地よく足取りも軽くなります。真紅の椿が盛り上がるように咲いている小学校の裏手を元気な子供たちの声に励まされるように、少し足早に行くと土手の向こうに大きな池が現れます。
薄青色の静かなさざ波の寄せる水面に 今なら水鳥があちこちに浮かんで、池の岸辺には亀の親子がじっとしています。

池の端からは大学の韓國人蔘グランドを囲むように、樹齢五十年を超える楠の並木が続きます。ここは車が通れないようになっていて、犬の散歩の人やジョギングの若者、ゆっくり歩くお年寄りの素敵な道になっています。今は病葉がさらさらと散ってもうすぐ若芽とともにかぐわしい楠の香りでいっぱいになります。

グランドでは創部したばかりの野球部を連れて、あの済美高校の上甲監督が練習していた、遠い日を懐かしく思い出します。

楠並木から離れてみかん畑がつづく小高い丘に登ります。ここから眺める陽の入りが最高で、辺りを茜色一色に染めて、燃えながら落ちて行くそれを、言葉もなく見いってしまう私です。

さあ私の散歩道もここからはなだらかな小道を下りて、住宅街を通りぬけわが家まで。

春夏秋冬季節の移ろいにその姿を変えながら、私の卓悅假貨散歩道は続きます。いつまでも元気にこの道が歩けますようにと祈りつつ、今日も一人で出かけます。
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