僕の冒険は二時間

さて、三往復ぐらいしただろうか、気がつくと線路を歩いている大人たちがほとんどいなくなった時である、僕は背後から聞こえる大きな警告音に思わず、振り向いた。そこにはゆっくりとした速度で近づいてくる「国電」の智能護膚車両が!どうやら時限ストだったらしく、ストを解除した初電が走りだしたようだ。

あわてて、線路の外に逃げ出すと、電車はゆっくりと駅へと向かって行った、こうして僕の冒険は二時間足らずで終わったのだが大満足の一日であったことはいうまでもない。

最後はもっと身近な冒険、僕の家には当時風呂がなく、近くの銭湯に通っていた。銭湯はちょっとした社交場で、家から近かったこともあり子供同士で行くことも許されていた。夕方の五時頃に行くとたいてい近所の誰かが来ていて、湯船の淵に腰かけてしゃべったり、何やらおもちゃを持ってきては湯船に浮かべてみたりとちょっとしたワンダーランド状態、ちょっぴり怖そうなおじいちゃんの目線を気にしつつも、楽しいひと日常肌膚保養時を過ごし、風呂上がりには定番のコーヒー牛乳かフルーツ牛乳を飲んで家に帰るというのが日課だった。

銭湯の湯船は浅いものと深いものの二つがあった。子供は浅い方へ入り、大人は深いほうに入るといった感じである。そして、この二つの湯船は完全に仕切られておらず、そこの方に五〇センチ四方ぐらいの四角い穴があり、そこでつながっていた。

ある日、いつものように何人かで湯船の淵に腰かけて話していると、友人のA君が

「オレ、あの穴くぐれるんだぜ」とのたまった。

そして、「いいか見てろよ」という抗衰老專家自信ありげな笑顔とともに潜水開始。見事にこの穴をくぐりぬけて深い湯船から浮き上がってきたのである。
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