愛しき人 ~ 痛み

イムジャは昔から自分の事より他人が優先で具合が悪うても我慢してしまう。

侍医が気付いた時には既に手のつけようが無く、神の手を持つ天人の手術は誰にも出来なかった。
気付けず申し訳なかったと侍医は何度も俺に頭を下げたが傍に居て気付けなかったのは俺の所為だ。

痛みも相当なもので眠っておるときだけ痛みを感じぬのだと侍医は申しておった。
だが、その薬をイムジャは俺がおるときは飲んでおらぬと…

あぁ…とチュンソクはヨンが話し終わる前に納得した。
そんなチュンソクをヨンは分かるのか?と訝しげに見る。

テホグンがお傍におられるときは痛みなど忘れてしまわれるのでしょう。
もしくは限りある時を惜しんでおられる。
どちらにせよ、医仙様はテホグンが傍におられると、それは幸せそうなお顔をなされます。
チュンソクの言葉にヨンは一層甘い眼差しで腕の中のウンスを見る。

寂しい思いをさせておるのは、分かっておるのだ。

テホグン…医仙様も分かっておられます。
チュンソクは二人が出会った頃からずっと見ていた。
離れていてもお互いを庇い守り信頼し合っているそんな二人を。

開京に居る間は、イムジャの傍にいてやりたい
そんなヨンの願いを断れる者など、この高麗にいる筈もなかった。
PR